直線の時間と丸い時間

2018年11月21日

天心庵守 

ようこそ、天心庵守へ。 

先日他界された樹木希林の遺作となってしまった作品なのも相まって、

上映中の「日日是好日」(にちにちこれこうじつ)を観てきました。 この作品は、エッセイスト森下典子が書かれた本「日日是好日-「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」を映画化したものだそう。恥ずかしながら、私は「正式なお茶」のお作法を知りません。

生来、「決められたかたち」というものを受け入れがたいたちなので、こればかりはなかなか変わりようがないのかもしれません。

それはさておき、映画の話に戻しましょう。

この映画を観る前は、お茶のハウツーものかいなと思いきや、映像が始まると期待はすぐに裏切られました。

若い20代の主人公(黒木華)がお茶の作法=かたちを習い、決められた所作を繰り返すうちに自然と心模様が変わっていく時間(とき)の流れが描写された作品でした。 掛け軸の禅語、つくばいの水、雨の音、木々の木漏れ陽・・

私たちが日々暮らす営みに当たり前にあったものが、静かにそして鮮明に映し出されていきます。 美しい描写に誘われながらわたしの心がほぐれていくと次第にからだ中でトクトクという自分の鼓動が聴こえてくるのです。

あ、自分のからだも時間を運んでいる。そう感じた瞬間、わたしのなかで

生きる時間がとても愛おしくなりました。いのちが有限なのも歳を重ねていくうちに現実として感じ始め、より身近になってくるのだなとこのところ想っています。85歳の母親にとっては、そうしたことがもっともっと当たり前にあって、周りの知人の音沙汰がなくなるたびに「次はわたしかしらね。」というのです。心の準備ができているかのようでした。老婆の母がより愛おしくなります。

まだ若い方々は毎日忙しい日々を過ごし、あるいは目的が定まらない自分の将来に悶々としているかたもいるかもしれません。若いときの時間と老いたときの時間の感覚は違うものですが、1日のなかで一瞬でもカチカチと音をたてる直線の時間ではなく、丸い時間の流れを楽しまれるのもいいかもしれません。

お茶でも一服、召し上がりながら。

一期一会